1967年、15歳の時からCMソングなどを担当していたしばたはつみ。1969年の丸善ガソリンのTVCM「Oh！モーレツ」も彼女の声とのこと。当時のCMはこちらで観ることができる 👉丸善ガソリン「Oh！モーレツ」 1968年に「はつみかんな」という名前でビクターからデビューしている。今回のアルバムはデビューから17年後のものである。当時の久石譲は1983年頃からフェアライトを手に入れ、シンセサイザやリズムマシン、ボコーダーなどの先端の楽器を駆使ししていた時代。ジャズやソウル、R&Bを主に歌っていたしばたはつみと、シンセでの打ち込みサウンドでサウンドプロデュース・アレンジャーとして活躍中であった久石譲とのコラボレーション。
全10曲のサウンドプロデュース・アレンジを久石譲が担当し、作曲は4曲となっている。現在でもamazon musicなどでストリーミングやダウンロードで手に入れることができる。久石譲の一歩引いた、と言おうか、冷静な暑くならない涼しいサウンドとアレンジが聴ける。ボーカルとアレンジのバランスが取れている隠れた名盤である。その当時の久石譲サウンドも感じることができるが、どちらかというとシンプルな味付けであり、盛り上がりすぎていない。「とりあえずX.T.C」は歌詞の内容もなかなか個性的であるが、アレンジ面でもおなじみのリムショットやオーケストラヒットが聴ける。久石譲の曲に特有な特徴のあるベースラインも曲を重くせず軽快に転がしている。「THE SPY I LOVE」の設定も「スパイもの」という濃い内容でインパクト大。「ラスト・サマー」などはイントロがサントラの手法であり、当時の映画音楽を彷彿とさせる。この曲はアレンジが久石譲でなければ一般的な歌謡曲風になってもおかしくない。しかしサウンドによってアルバムの中で統一感を保っている。「ラテン・ナイト」のブラスのフレーズなどは、もちろん洋楽のなにかに元ネタがあるかもしれないが、その後の「となりのトトロ・イメージソング集」の「ふしぎしりとりうた」にも使われる。ラストの「Mr.J」は久石譲の作編曲であるが、この曲は隠れた名曲であろう。久石譲には珍しいコード進行でとても冷静なアレンジ、四分音符で同じ音程で入るボイス系のサンプル、808系の優しいドラムサウンド。削ぎ落とした高音のシンセフレーズ、間奏で聴ける甘いギターソロ・・・・どれを取っても素晴らしい。このアルバムの特徴は「絶妙なバランス」ではないだろうか。ボーカリスト、アレンジャー、そしてミックスのさじ加減もちょうどいい。
このアルバムで聴くことができる、当時の都会的な冷たいサウンドやアプローチは、3年後の1988年のソロアルバム「illusion」にも受け継がれているのではないか。久石譲の80年代の仕事を見てみると、映画サントラで有名ではあるものの、それ以上に歌物のアレンジや作曲、プロデュースがかなりの数に登る。この当時、他アーティストの歌物を多く手掛けた先に、日本語歌詞でのボーカリスト久石譲を前面に出した1988の「illusion」、1989年の英語歌詞の「PRETENDER」へと繋がっていくのだろう。久石譲 当時35歳の時の仕事である。
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プロデュース：Ken Okada
サウンドプロデュース：久石譲・TEGTAN project
レコーディングエンジニア：時枝一博
レコーディングスタジオ：Joe’s Station・Nippon Columbia Studio
とりあえず X・T・C
THE SPY I LOVE
作詞：ちあき哲也
作曲：久石譲
編曲：久石譲
歌：しばたはつみ
哀しみの渚
〜 JUNTOS EN ETERNIDAD 〜
作詞：Neyda Perdomo
和詩：片桐和子
作曲：Neyda Perdomo
編曲：久石譲
歌：しばたはつみ
モーニング・ラブ・コール
詞：中原葉子
作曲：いけたけし
編曲：久石譲
歌：しばたはつみ
ラスト・サマー
詞：岡田冨美子
作曲：いけたけし
編曲：久石譲
歌：しばたはつみ
ラテン・ナイト
詞：中里綴
作曲：山崎修
編曲：久石譲
歌：しばたはつみ
Final Concurse
〜 異国にて 〜
作詞：SEYMOUR（麻生香太郎）
作曲：いけたけし
編曲：久石譲
歌：しばたはつみ
室内楽
〜 Vivaldi’s Song 〜
作詞：MICHAEL FRANKS
和詩：山川啓介
作曲：MICHAEL FRANKS
編曲：久石譲
歌：しばたはつみ
Hotel
〜 異国にて 〜
作詞：SHOW
作曲：久石譲
編曲：久石譲
歌：しばたはつみ
Mr.J.
作詞：SHOW
英語詩：MONICA
作曲：久石譲
編曲：久石譲
歌：しばたはつみ
1985-J35-SGK4-N10
