ハウス食品「王風麺・わんふうめん」1985


 1985年の仕事である。この1985年という年は、とにかく精力的に商業音楽の道を突き進んでいる印象である。自身
のアルバム「α-BET-CITY」や「CURVED MUSIC」に収録されている楽曲も大半がCMなどで使われたものを作品として仕上げたものである。しかし上記の2枚のアルバムに収録されなかったCM楽曲も多く、このハウス食品「王風麺」もそのうちの一つである。

 冒頭部分のエレクトリックなタムのサウンドが、いつもの久石譲のサウンドであるが、CMの性格上「久石メロディ」的な印象はあまりなく、あくまでもBGM的に作られている。後年、食品や商品のCMでも「久石メロディ」や美しいアレンジを聴くことができるが、それはある意味「久石ブランド」が世間に定着し、CM依頼側も、そのアーティスティックな面を前面に出すことを前提に企画されいる。しかしこの時代の久石譲には、売れっ子の「CM楽曲職人」という面もあったと思われる。もちろん同時期の「kanebo ザナックス」のCMに代表される、それこそ上記2枚のアルバムに収録されている曲たちは、十分に「アーティスト久石譲」を感じることができる。しかしその一方で「王風麺」のような、純粋に商品のCMであることを意識した曲作りもまた魅力である。商業とアートを行ったり来たり・・・または共存するのが久石譲である。


 久石譲が手がけた当時のCM曲には珍しく、ラストに商品名を歌う部分があり、新鮮である。ナウシカの翌年、ラピュタの前年の作品。


作曲:久石譲
編曲:久石譲
出演:岸本加世子






[1985-J35-SGK4-N10]

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