この曲は後日、1986年のソロアルバム「CURVER MUSIC」に「794BDH」として収録されている。またその後、2000年のアルバム「Shoot The Violist」にも「794BDH」としてビオラとピアノの別アレンジで収録されることになる、息の長い曲になった。この曲はミニマル要素が強い。メロディ然としたものはなく、コードやシーケンスやフレーズトップの音がそのままメロディとして聴こえるイメージだ。15秒から30秒のCM音楽であるので、その中でも展開はある。フェアライト系の音色のストリングスとソロ弦楽器的なものがメインを取る。当初からこのメイン楽器はビオラだったのだろうか?2000年の「Shoot The Violist 〜ヴィオリストを撃て〜」というアルバムは、タイトル通りヴィオリストにスポットを当てたアルバムである。この曲は過去の久石譲の作品のカバーが主であるが、その1曲目に「794BDH」が収録されている。とても大事な曲のようである。
このCMは1985年のマツダファミリアのフルタイム4WDのものである。撮影シーンも一面の雪景色の中をスピードを上げて駆け抜けるファミリアの映像と、渋い男性ナレーションで構成されている。当時のサンプリングレート・ビットレートの低い、少しこもり気味のサウンドが、なんとも良い雰囲気を出していて、1980年代当時も新鮮だったろうが、今でも同じようなスタンスで曲を作る人間が少ないのではないだろうか、とても新鮮に聴こえる。いわゆる時代に左右されない曲といった印象がある。久石譲の大学時代以降の原点であるミニマルミュージックを「商業音楽」の世界に持ち込んだ、とても挑戦的・実験的なものだったのではないだろうか。というのも、若い頃「ムクワジュ」などでミニマル音楽を追求していた久石譲だが、その後のマーチングやブラスバンドの編曲、子供向け音楽など、しばらくミニマル的なサウンドを世に出す機会がなかったと思われる。1980年代の中盤は、フェアライト・シーケンサー・サンプラーという要素を手に入れ、「ナウシカ」の成功と評価により、久石譲という名がブランドになりつつある時代。自分のルーツであるジャンルを、それこそ正反対の環境である商業という世界で堂々と発表し、しかもその新鮮さと意外性でさらに評価を高めた。タイミングがうまくまわった・・・いや自ら回したのか。とにかく1980年代中盤は、CM音楽で色々と挑戦と実験ができ、それがまた肉になっていくという、とてもエネルギーを感じる時代である。1990年代は、そこにブランドイメージが加わり、熟成していく段階なのかもしれない。1980年代ほどのエネルギッシュな挑戦は少しおさまり質感・テーマ・高貴さ・普遍性的なものに磨きがかかっていく年代かもしれない。
「794BDH」と近い音色と近いフレーズを使用しつつ別曲のFAMILIAのCMがあるが、そちらは翌年の1986年の仕事。派生したファミリアの曲も手がけたものと思われる。
ところで、曲のタイトルがなぜ「794BDH」なのか・・・・その答えは動画の中にあった!!一瞬で消えてしまう映像であるが、撮影に使われたファミリアのナンバープレートが「794BDH」なのである。もちろん撮影時に深い意味は・・・・ないと思うが、これが曲名の由来である。ちなみに同時期に作られた別のCMでは「FAJF291」というナンバーの車体が走っている。恐らく「794BDH」のCM映像の方を見ながら作曲したのだろう。
・・・・ナウシカの翌年、ラピュタの前年、久石譲35歳の仕事である。

CMのバージョンによって使用したナンバーが違うが、これはまさに「794BDH」









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シンセサイザー・オペレーター:福岡保子
シンセサイザー
FAIRLIGHT CMⅠ・ⅡX・Ⅲ 音色紹介
PPG WAVE 2.2 音色紹介
Prophet 5 音色紹介
DX-7 音色紹介
Mini Moog 音色紹介
Lindrums 音色紹介
TR-808 音色紹介
※ アルバム「CURVED MUSIC」ライナーノーツより。
全体表記なので曲によって使っていない楽器もあると思われます。
[1985-J35-SGK4-N10]